介護の計画書AI下書きは記録3行で守れる

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ケアプランや個別援助計画の下書きに生成AI(文章を自動で作るAI)を使う事業所が増えています。アセスメントのメモを貼り付けると、長期目標・短期目標・サービス内容の案がそれらしく並ぶ。手が止まりがちな「最初の一文」が埋まるだけでも、作成時間は確かに縮みます。

ただし、計画書は記録であると同時に説明責任の証拠でもあります。運営指導で聞かれるのは「誰が、どの情報をもとに、なぜこの目標にしたのか」。AIが出した文章をそのまま載せていると、この問いに答えられません。逆に言えば、答えられる形で記録さえ残しておけば、下書きにAIを使うこと自体は問題になりにくい。この記事では、現場の手間を増やさずに「人が判断したところ」を残す方法を、具体的な書き方のレベルまで落として整理します。

なぜ「人が判断したところ」を残す必要があるのか

理由は3つあります。

1つ目は説明責任です。居宅サービス計画書には標準様式が示されており、その中の「居宅介護支援経過」にあたる欄は、計画に至るまでのやりとりを時系列で残す場所です。利用者・家族への説明、サービス担当者会議での意見、ケアマネジャーの判断が書かれていることが前提になっています。AIが文章を作ったかどうかに関わらず、この流れが欠けていると計画書の根拠が見えなくなります。

2つ目は誤りの切り分けです。生成AIは、入力にない内容をもっともらしく書き足すことがあります(いわゆるハルシネーション=事実でないことを自信ありげに書く現象)。後から「この文、どこから来たのか」と確認するとき、AIの出力をそのまま採用したのか、職員が加筆したのかが分かっていれば、原因の特定が数分で済みます。分かっていなければ、アセスメント票をゼロから読み直すことになります。

3つ目は専門性の可視化です。AIの案を採用しなかった判断にこそ、その職員の見立てが表れます。「入浴の自立支援を目標に」とAIが出してきたが、本人が入浴そのものを強く拒んでいるため清拭の受け入れから始めた——この一行が残っていれば、計画の質を疑われることはありません。

記録は計画書本体ではなく、経過記録と台帳に分ける

よくある失敗は、計画書の本文に「※AIで作成」と注記してしまうことです。計画書は利用者・家族が読む書類であり、作り方の内情を書く場所ではありません。記録は次の2か所に分けるのが実務的です。

置き場所 書く内容 更新のタイミング
支援経過記録(居宅介護支援経過にあたる欄) その利用者について、AI下書きを使った事実と、人が変えた点・その根拠 計画作成・変更のたび
事業所のAI利用台帳(Excelや共有フォルダのメモで可) 使ったツール名、入力した情報の種類、承認者、気づいた不具合 利用のたび、または週次でまとめて

利用者ごとの判断は経過記録に、事業所としての管理情報は台帳に。この分け方にしておくと、運営指導では経過記録を、情報管理の質問には台帳を見せればよく、説明がぶれません。

残すのは3行 — 「させたこと・変えたこと・その根拠」

経過記録に長文は要りません。次の3行で十分です。

  • 1行目:AIに何をさせたか(例:アセスメント要点をもとに、短期目標とサービス内容の案を5件生成)
  • 2行目:人がどこを変えたか(例:目標2を「屋外歩行」から「居室内の伝い歩き」に修正。サービス内容の訪問リハ週2回を週1回に変更)
  • 3行目:なぜ変えたか(例:本人が転倒への不安を繰り返し訴えており、家族も屋外同行が難しいと述べたため。担当者会議でPTも段階設定に同意)

たとえば次のような書き方になります。あくまで記入例として読んでください。

記入例
「◯月◯日 計画原案の作成にあたり、課題整理の要点を生成AIに入力し、短期目標案を出力。出力案のうち『入浴動作の自立』は本人の強い拒否があるため採用せず、『清拭を週2回受け入れる』に変更した。根拠は◯月◯日の面談での本人発言、および家族からの聞き取り。残る目標2件は文言を整えたうえで採用。原案は管理者が確認し、サービス担当者会議で提示。」

ポイントは、採用しなかった案を1つは書き残すことです。「全部そのまま使いました」という記録は、人が判断した形跡が見えません。採用しなかった案と理由が1つあるだけで、職員が内容を読んで取捨選択したことが伝わります。

入力する前に決める線引き — 氏名を入れるかどうかではない

記録の話の前に、そもそも何を入力してよいかを決めておく必要があります。医療・介護分野では「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」が示されており、利用者の心身の状態に関する情報は特に慎重な扱いが求められます。外部のAIサービスを使う場合、入力内容が学習に使われるかどうか、保存期間はどうかを契約や規約で確認しておくのが前提です。この確認の勘所は規約改定の通知が来たら見る3か所 — 学習・保存・商用利用で整理しています。

現場で迷うのは「氏名を消せばよいのか」という点ですが、判断軸はそこだけではありません。地域・疾患・家族構成を組み合わせると個人が絞り込めてしまう場合があります。事業所で決めておきたい線引きは次のとおりです。

情報の種類 扱いの目安
氏名・住所・生年月日・被保険者番号 入力しない。記号(A氏、B氏)に置き換える
疾患名・ADLの状態・services の利用状況 利用者が特定されない粒度に丸めたうえで入力の可否を事業所で判断
家族関係の機微な事情、虐待・経済的困窮に関する記述 入力しない。人が直接書く
本人・家族の発言の逐語 原則入力しない。要約した事実のみ

線引きの決め方そのものはAIに個人情報を入れる前に決める5つのこと──「全面禁止」より「線引き」が業務を回すでも扱いました。全面禁止にすると結局は個人の判断で持ち込まれてしまうので、使える範囲を明示するほうが安全に働きます。

下書きの質をそろえると、記録も短くなる

職員ごとに頼み方が違うと、出てくる案の粗さがばらつき、直す量も記録の量も増えます。事業所で共通の依頼文(プロンプト)をひな形として持っておくと、ここが安定します。たとえば次のような構成です。

  1. 役割の指定:「介護支援専門員の補助として、計画原案のたたき台を作ってください」
  2. 入力情報の提示:匿名化したアセスメント要点、本人の意向、家族の意向
  3. 出力の形式:「短期目標を3〜5件、それぞれに期間の目安とサービス内容案を添えて、箇条書きで」
  4. 禁止事項:「入力にない疾患名・服薬内容・家族構成を推測して書かないでください」「断定を避け、確認が必要な点は末尾に列挙してください」

4つ目の「入力にないことを書かない」と「確認が必要な点を列挙させる」は特に効きます。AIが自分で「ここは情報不足」と挙げてくれた項目が、そのまま人が確認すべきリストになるからです。ひな形の作り方はAIの答えのぶれは頼み方でそろう — 社内ひな形の作り方で詳しく書いています。

明日から試せる1週間の運用

いきなり全件に広げる必要はありません。次の順で小さく始めるのが現実的です。

  • 1日目:経過記録に書く3行のフォーマット(させたこと・変えたこと・根拠)を紙1枚にして共有する
  • 2日目:入力してよい情報・だめな情報の表を作り、休憩室に貼る
  • 3〜5日目:更新期限が近い計画のうち2〜3件だけで試す。担当は1〜2名に絞る
  • 6日目:試した職員に「直すのにかかった時間」を聞く。ゼロから書く場合と比べて短くなっているかを確認する
  • 7日目:出力に混ざった誤り(入力にない内容、不自然な目標設定)を台帳に書き出し、依頼文の禁止事項に追加する

評価の軸は「書く時間」より「直す時間」です。下書きが雑だと、読み直して直すほうが時間がかかります。この見方は介護記録のAI入力は「書く時間」より「直す時間」で決まるでも触れたとおりで、計画書でも同じことが起きます。

まとめ

計画書の下書きにAIを使うこと自体は、手段の一つにすぎません。問われるのは、その計画が利用者の状態と意向にもとづいて組み立てられているか、そしてそれを説明できる形で残しているかです。

  • 記録は計画書本体ではなく、支援経過記録と事業所の利用台帳に分けて置く
  • 経過記録は3行でよい。AIにさせたこと、人が変えたこと、変えた根拠
  • 採用しなかった案を1つ書き残すと、人の判断が見える記録になる
  • 入力してよい情報の線引きを先に決め、依頼文のひな形で出力をそろえる
  • 評価は「直す時間」で見る。直す時間が減らないなら、依頼文か入力情報に原因がある

この3行を書く手間は、1件あたり1分もかかりません。その1分が、半年後の運営指導や、家族からの問い合わせに答えるときの土台になります。まずは2〜3件、更新が近い計画から試してみてください。

この記事は、AI で下書きを作り、益山康秀(運営者)が内容を確認して公開しています

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